リオ五輪のコロンビア戦に先発出場した藤春が、
痛恨のオウンゴールを献上してしまった。
いやー、せっかくたどり着いた世界の舞台で、
まさかこんなことが待ち受けているなんて。
世の中とは残酷なものだ。

「勝てば英雄、負ければ戦犯」がお決まりとなっている我が国のスポーツ観戦スタイルである。
僕自身はそんなものにロクに耳も傾けていないけれど、
彼に対する批判の声が渦巻いていることは容易に想像できる。
そんなものは全スルーで構わないし、
藤春はスウェーデン戦でベストを尽くして、
そして五輪が終わったら堂々と帰ってくればOK。
OA枠として、この国のサッカー選手を代表して戦いの地に赴いたことを誇りに思えばいい。


しかしまあ、何とも豪快なオウンゴールでしたな。
と同時に「藤春ならやりかねない」というのが正直な感想だったりもする。
それは普段のガンバ大阪でのプレーを見ていると察することができるからだ。

藤春といえばJリーグデビュー戦のヘディング空振りが有名だが、
すっかり試合の空気に場慣れしたはずの15年でも、
日産スタジアムのマリノス戦でPA内のハイボールをヘディングせずに、
ワンバウンドさせた結果が手に当たってPK献上というミスをやらかしている。
咄嗟の場面で「それはないやろ」という判断をしてしまうのが藤春。

そして彼は試合中、滅多に右足でボールを扱わない。
自陣でのビルドアップ時も、
「そこ、わざわざ左足に持ち替えるかね?」と思うほど、徹底して左足。
よほど右足でのボール捌きに自信がないんだろうか。

そんな彼のもとに、左足では蹴られない位置に悩ましげなボールが転がってきたら..

迷いに迷った右足が、
クリアでもないトラップでもない中途半端な当たり方をしてしまうのも不思議ではない。
つまり、それが藤春なのである。

それだけ大きな難点を抱えながらもなお、
彼はガンバ大阪で主力として活躍し続けているし、
ハリルホジッチ監督からも定期的にA代表に呼ばれている。
そして今回もOAとして白羽の矢が立った。
彼の武器である圧倒的なスピード、そして無尽蔵のスタミナが、
数々の指揮官の目に魅力的に写ってきた証だ。
その恩恵にあやかりたいのであれば、
多少のやらかしには目をつぶる覚悟が必要。
きょうの試合ではギャンブルに失敗したくらいの感覚でいてもらえれば、
もしかしたらスウェーデン戦では大当たりが待っているかもしれませんよ国民の皆さん。



しかし改めて思った。
藤春がこの試合で起きたことと向き合って今後サッカー選手として歩んでいかねばならぬのと同時に、
我々もまた藤春という選手と向き合って応援を続けていかねばならぬということを。

きっとまたガンバ大阪の試合でも凡ミスを犯すことがあるだろう。
だが、そんな時は「まあそれが藤春やからな」と割り切って、
とんでもないスピードで左サイドを行ったり来たりする彼を応援する覚悟を据えた。